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June 20, 2005

素足に木

京都にきています。昨日、東京から名古屋まで新幹線で行って、名古屋から近鉄線で長谷寺に寄ってから京都に入りました。

近鉄特急が名古屋を出て暫くすると、車窓は田んぼや山々の景色で美しい緑色に彩られていきました。そして電車の速度が新幹線ほどではないせいか、時間の経過も速度を緩めているかのように思えてきます。日常の仕事の緊張感が自然に体から抜けていきました。泊まりがけで出掛けるのは1年半ぶりです。いつもと違う外の空気、目に映る景色、聞こえてくる音に自身の五感が敏感に反応しているのが分かりました。

2日目の午後です。

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宿泊先の四条大宮でバスに乗り、北へ向かって5分少々。「うぐいす張り」で有名な二条城に到着です。確か高校のときに修学旅行で来たことがあるのですが、ほとんど記憶にないので改めて観たいと思いやって来ました。入口で入場料を払い東大手門を抜けると、まずは二の丸御殿の見学です。車寄(入口)で靴を脱いで中へ入るのですが、この日、私は靴下がなくて裸足に靴を履いていたのです。格好悪い気もしましたが、気にせず裸足で御殿に上がり廊下を進んでいきました。すると、早速うぐいず張りの「きゅうきゅう」という音が私を迎えてくれました。同時に、素足で木の床を歩く感触がとても心地よいことに気が付きました。床が奏でる音色と素足の感触をかみしめながら、大名の控室である遠侍の間、大名が老中と挨拶を交わす弐台の間、そして将軍が外様大名と対面する大広間一の間へと進んでいきました。大広間一の間では、将軍、老中、若年寄、大名らのフィギュアが置かれ、実際に対面する様子が再現されていました。ここで実際に時代劇で観るような光景が繰り広げられていたのかと思うと、感慨深くなります。

二条城を出ると、地下鉄東西線で蹴上へ移動しました。地上に出ると、街中に位置している二条城とは異なり、さらに落ち着いた空気がそこにはありました。三条通から小道に入り、南禅寺へ向かうと、その落ち着きはさらに深みを増してきます。道の脇には水路が流れ、子供が小魚を採っていました。その後、南禅寺の三門、琵琶湖から京都市内へ向けて作られたという水路・疎水を見学して、もみじの永観堂(禅林寺)に向かいました。

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禅林寺には「みかえり阿弥陀像」といって、後方を振り向く姿をした仏像があります。それには「遅れる者を待つ姿勢」「自身の過去を待つ姿勢」としいった意味があるそうです。一見、見慣れないおかしな姿をしているようにも思えますが、そのような込められた意味をかみしめると実に尊い存在に見えてきます。境内を歩くと、夕日に照らされたもみじの葉が、美しく明るい緑色を舗道に向かって降り注いでいました。
「もみじの緑がこんなに美しいものなのか…。」
秋には鮮やかな赤色に燃え上がり、観光客で賑わうそうです。この翌日に行った龍安寺など、もみじの木が庭園を飾るお寺は京都に割と多いようなので、是非一度秋に訪れてみたいものです。禅林寺の諸堂の廊下を歩くと、中庭の木々や花を楽しむこともできます。私はここでも素足でしたので、木造建築の優しさを肌で感じながら、目でも和の風情を存分に楽しむことができました。

京都のお城、お寺は、私の心身を近頃忘れかけていた「自然体」へと導いてくれました。その効果は帰京した現在でも続いているように思えます。特に素足の感触が忘れられず、肌で直接感じ取った「何か」が私に良い作用をもたらしている気がしてなりません。

京都を思い出すと、また行きたい、いや、帰りたいと思ってしまうのです。

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June 12, 2005

国分友里恵「Do You Love Me」

1991年作品。

私が高橋由美子にハマっていた1994~1995年頃のある日、銀座の赤提灯で友人と音楽談義を楽しんでいました。そのとき私は高橋由美子の歌と岩本正樹のアレンジの素晴らしさを友人に話したのですが、その友人は既に岩本正樹のことを知っていたのです。そして岩本正樹の奥さんが国分友里恵というコーラスシンガーで、ソロでもアルバムを出しているということを教えてくれました。当然、彼女のアルバムは岩本正樹がアレンジを担当していて、歌も素晴らしく上手いということだったので、その友人からCDを借りて聴いてみることにしました。

借りたアルバムは「STEPS」「SILENT MOON」「Do You Love Me」(発売順)の3枚で、どれも違った良さがあって気に入ったのですが、「Do You Love Me」の仕上がりはその中で群を抜いていました。ちなみに「STEPS」は2ndアルバムで、アナログでのみ発売された「Relief 72 hours」が1stアルバムです。それでは、「Do You Love Me」の中身について話を進めましょう。

素敵な夜の始まり、そんな雰囲気を感じさせてくれる「Dear~How To Love You」でこのアルバムの幕が開けます。実はこれが聴き手を唸らせるほど素敵な音楽の始まりになるのです。1曲目は力強いドラムとトランペット、サックスによる豪勢な演奏をバックに、国分友里恵の丁寧で力強いボーカルが美しく響きます。

2曲目はスロー・テンポに転じ、ボーカルを完全に音像のメインに位置付け、歌声の美しさで聴き手を完全に惹きつけます。国分友里恵の歌声は聴いていてうっとりするのですが、力強さも持ち合わせているので同時に爽快感も与えてくれるのです。特に伸ばしながら音程が上がっていくところは圧巻で、聴いているとまるで高速の乗り物にでも乗っているかのような快感を覚えます。

ミドル・テンポの3曲目「Good Place,Good Days」ではそんなボーカルがエンジン全開に響き渡りますが、ここからアレンジもテンションを同調するかのように曲に味付けを施していきます。リズム・パターンを奏でた洒落たイントロで始まり、要所で入るギターのアクセント、間奏でのギターと金管楽器の共演、曲の質感を底上げしている完成度の高いコーラスなど、多彩な要素が凝縮されています。

3~6曲目は洒落たバーにでもいるような雰囲気のミドル調の曲が続くのですが、4曲目の「Second Chance」は英語詞で目先を変えてきます。構成の上手さですね。続く「Back To You」「Whiskey Coke」においても斬新で思い切ったアレンジで楽しませてくれます。また、「Back To You」で登場する本田雅人のサックスも見逃せません。

7~8曲目は雰囲気を変えてゆったりとした曲調で夜から朝に向かい、9曲目の「恋のナビゲイション」へと続いていきます。そして最後は「恋のナビゲイション」のインストでこのアルバムは幕をとじます。曲の雰囲気と歌詞を読んで気が付いたのですが、実はこのアルバム、1曲目から10曲目に向かって曲の内容が夜から朝へ向かっていて、音楽で時間の経過を楽しめるようになっています。

この「Do You Love Me」はポップスほど軽くないし、歌が凄すぎてフュージョンとも言い切れない感じがするし、SHINJO風に言うなら「コーラスシンガーに優秀なプレーヤーがバックについたらこんなアルバムができちゃった打法」という作品です。国分友里恵は別格かもしれないですけど、コーラスシンガーの人は本当に歌が上手いです。目立たないけど、コーラスはそうでないと務まらないんですね。だから、普段コーラスをやっている人がボーカルに出てくるとその実力にびっくりします。

そんな歌声の素晴らしさとアレンジの引き出しの数々を楽しめる1枚なんですが、あいにくこのアルバムは廃盤です。これだけ完成度の高い「Do You Love Me」ですが、個人的には2ndの「STEPS」が好きだったりします。「STEPS」については改めて取り上げたいと思います。

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June 07, 2005

高橋由美子 2

まだまだいきます!! (笑)

高橋由美子の歌の魅力は前の記事で書きましたが、そんな実力とは裏腹に、彼女の歌手としての活動期間は意外に短命なのです。1stシングル「Step by Step」が発売されたのが1990年、以降1999年まで毎年シングルを出してはきましたが、アルバムを出してツアーをやった年はわずか91年から94年までの期間だけでした。しかも1回のツアー本数は12本が最高ですから(94年)、彼女の歌手生活においてコンサートという舞台は非常に限定的だったといえます。

94年はアルバム「Tenderly」が発売された年で、シングル「友達でいいから」のベストテン・ヒットもあり、歌手として絶頂期だったと思います。この次はどんなアルバムやステージを見せてくれるのだろうと私も期待を膨らませていました。しかし、なぜか翌95年はアルバムのリリース、コンサート共にありませんでした。96年に2年ぶりのアルバム「万事快調」が発売されるも、アレンジャーが岩本正樹から清水信之に交代して趣向が変わり、94年の勢いは感じられませんでした(清水信之は優秀なアレンジャーです。ただ、高橋由美子・岩本正樹のマッチングが良すぎたのです)。それを象徴するかのように、アルバムを引っ提げてのライブは赤坂BRITZで行われた1本のみでした。その後の音楽活動は細々としたもので、97年に2年連続でアルバム・リリースを果たすも作品の質と人気の低下は否めませんでした。

こうして活動の歴史を振り返ると、持てる力を発揮し切れずに活動が衰退していった感じがして惜しい気がします(その分、女優業が充実したのでしょうが)。1992年に初のフル・アルバム「dream」リリースして以降、「Paradise」「Reality」「Prelude」とサウンド的に完成された作品を次々にリリースして、「Tenderly」で絶頂期を迎えたのです。「すき…でもすき」「Good-bye Tears」といった、アルバムに収録されていないシングルの名曲も持ち駒で残っていたわけですから、95年にも何とかアルバムを出して欲しかったです。

最初に書きましたが、高橋由美子のコンサートは貴重です。先日、「高橋由美子のコンサート実現に向けたアンケート」なんていうサイトを見つけました。本当に実現できたら凄いですね。たった1回でもいいので、1994年の夢をもう一度見させてくれないかなー。

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June 04, 2005

高橋由美子

Tenderly
1994年7月、高橋由美子が「Tenderly」というアルバムをリリースしました。その頃、高橋由美子のことはあまりよく知らなかったのですが、秋葉原の中古CDショップへ行くと彼女のCDの買取価格は非常に高値をつけていたので名前だけは記憶にとどめていました。その後、彼女は非常に歌が上手いという話を聞いたので、この「Tenderly」を買って聴いてみたのです。そしたら、聴いてびっくり。歌は抜群に上手いし、曲は詞もメロディーも綺麗だし、極めつけはアレンジが素晴らしかったのです。

この頃、高橋由美子の曲のアレンジは岩本正樹が担当していました。音像はどの曲も非常にシンプルで、無駄な音が全くありません。3-「泣いてもいいよね」4-「A Song For You」といったバラード・ソングにはピアノを基本にストリングス、ベース、要所にドラムという構成でメロディー・ラインを際立たせ、7-「天使か悪魔」、8-「8分休符」のようなミディアム調の曲には「ここぞ、アレンジの腕の見せ所」といわんばかりに、曲に思い切った飾り付けをしています。7なんかは女の子の揺れる心情を歌った曲なので叙景的な要素はあまりないのですが、その心情を曇り空を鳥が旋回している様子に見立て、その景色が目に浮かぶようなアレンジが施されていて(←自分の勝手な解釈です)、8は「忙しい今の大人の自分もいいんだけど、ふと昔の気持に帰って感慨にふける」という内容の曲なのですが、時を刻むようなリズム・パターンと美しいストリングスの音色で郷愁を盛り上げています。

アレンジの岩本正樹の夫人は国分友里恵というコーラス・シンガーなのですが、実に美しい歌声の持ち主で、彼女は自分でもアルバムをリリースしています(改めて記事で取り上げたいと思います)。CDのどこにも書いていませんが、おそらく、この「Tenderly」でコーラスを務めているのは国分友里恵でしょう。他にも作曲の秋元薫、作詞の渡辺なつみといった優秀な作家陣がこのアルバムの脇を固めています。

岩本正樹のアレンジはリズム・パターンを前面に押し出すため、ボーカルに声量がないとそれに負けてしまうのですが、高橋由美子のボーカルはそんな演奏をバックにしても存在感を十分に示しています。どの曲もメロディーに派手さはなく、アレンジも曲の良さを最大限に引き出しつつあとは歌い手の力量に任せるというスタンスを貫いているため、歌い手にとっては非常にプレッシャーのかかるオケの出来だと思います。しかし、若干二十歳の高橋由美子はうまく抑揚をつけ、そしてファルセットも素晴らしく、1曲1曲に見事に表情を吹き込みました。「アイドルが出した1枚のアルバム」といってしまえばそれまでですが、90年代の日本のPOPS作品を代表する1枚としてもっと評価されていいと思います。

現在、このアルバムは廃盤です。

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