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June 04, 2005

高橋由美子

Tenderly
1994年7月、高橋由美子が「Tenderly」というアルバムをリリースしました。その頃、高橋由美子のことはあまりよく知らなかったのですが、秋葉原の中古CDショップへ行くと彼女のCDの買取価格は非常に高値をつけていたので名前だけは記憶にとどめていました。その後、彼女は非常に歌が上手いという話を聞いたので、この「Tenderly」を買って聴いてみたのです。そしたら、聴いてびっくり。歌は抜群に上手いし、曲は詞もメロディーも綺麗だし、極めつけはアレンジが素晴らしかったのです。

この頃、高橋由美子の曲のアレンジは岩本正樹が担当していました。音像はどの曲も非常にシンプルで、無駄な音が全くありません。3-「泣いてもいいよね」4-「A Song For You」といったバラード・ソングにはピアノを基本にストリングス、ベース、要所にドラムという構成でメロディー・ラインを際立たせ、7-「天使か悪魔」、8-「8分休符」のようなミディアム調の曲には「ここぞ、アレンジの腕の見せ所」といわんばかりに、曲に思い切った飾り付けをしています。7なんかは女の子の揺れる心情を歌った曲なので叙景的な要素はあまりないのですが、その心情を曇り空を鳥が旋回している様子に見立て、その景色が目に浮かぶようなアレンジが施されていて(←自分の勝手な解釈です)、8は「忙しい今の大人の自分もいいんだけど、ふと昔の気持に帰って感慨にふける」という内容の曲なのですが、時を刻むようなリズム・パターンと美しいストリングスの音色で郷愁を盛り上げています。

アレンジの岩本正樹の夫人は国分友里恵というコーラス・シンガーなのですが、実に美しい歌声の持ち主で、彼女は自分でもアルバムをリリースしています(改めて記事で取り上げたいと思います)。CDのどこにも書いていませんが、おそらく、この「Tenderly」でコーラスを務めているのは国分友里恵でしょう。他にも作曲の秋元薫、作詞の渡辺なつみといった優秀な作家陣がこのアルバムの脇を固めています。

岩本正樹のアレンジはリズム・パターンを前面に押し出すため、ボーカルに声量がないとそれに負けてしまうのですが、高橋由美子のボーカルはそんな演奏をバックにしても存在感を十分に示しています。どの曲もメロディーに派手さはなく、アレンジも曲の良さを最大限に引き出しつつあとは歌い手の力量に任せるというスタンスを貫いているため、歌い手にとっては非常にプレッシャーのかかるオケの出来だと思います。しかし、若干二十歳の高橋由美子はうまく抑揚をつけ、そしてファルセットも素晴らしく、1曲1曲に見事に表情を吹き込みました。「アイドルが出した1枚のアルバム」といってしまえばそれまでですが、90年代の日本のPOPS作品を代表する1枚としてもっと評価されていいと思います。

現在、このアルバムは廃盤です。

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